作事組全国協議会 奈良大会2018 開催報告 | 作事組全国協議会

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作事組全国協議会 奈良大会2018 開催報告

第6回作事組全国協議会成功裏終了

設立10周年の節目の作全協奈良大会が開かれました。町家再生のまちづくりで先行していた奈良とは、京都の活動開始時しばらくは交流がありましたが、その後疎遠になっていました。作全協姫路大会前になら・町家研究会に当会への入会と次回開催をお願いして実現しました。

総会では八女町並デザイン研究会から提案のあった、仲間を増やして活動を面的に展開する地域ブロックの設立も承認され、新たな活動が展開されることになりました。活動報告では各地域の活動状況をグループの代表が発表していただき、地域主体の活動を印象付けるとともに、参加他地域グループの刺激にもなったと思います。

シンポでは会員約50名に対して約70名の市民の方に参加いただき、町家再生の主人公である住み手や市民との分かり合い、というシンポの趣旨に沿った会になりました。大会のテーマは「住み継ぐための技術と知恵」の知恵は現代の暮らしとのすり合わせを住み手と考える工夫ということでしょう。初めに上野邦一奈良女子大名誉教授の奈良町家の成立・発展、地域の気候に沿い四季の行事との結びつき、個人所有であっても公共的性格を持つこと、そして町家の良いところ悪いところと、それを克服する工夫などを一般の方にもわかるようにスライドを使って話していただきました。続くパネルディスカッションでは造園業の大岸さんから地域の植生に沿い、駐車場や遊べる庭など現代の要求に沿った庭造りを、大工の堀さんと左官の宮奥さんからは、やってみないとわからないことの多い町家改修現場での苦労や工夫、すなわち決まりきったことをするのではなく現場対応での納め方の工夫、そして現場手仕事の減少による資材や後進の確保の苦労が訴えられました。設計の藤岡さんからは現状調査や原状の痕跡を見極め改修設計に生かすこと、現代の暮らしに必要な要素を町家の構成を崩さず取り入れる工夫などが説明されました。いずれも一般の方に分かりやすい内容と町家再生につくり手が奮戦する様が参加者に伝わったと思います。

分科会では町家を直して守っていく際の3つの課題が話し合われました。その1は「町家の耐震改修法」。瀧野敦夫奈良女子大准教授から伝統構法の構造解析の成果とその困難性が、設計の末川さんから京町家の構造の読み解きと地震への応答の試論が、大崎修構造設計事務所所長からは限界耐力計算法に依る現行基準との整合性を図る手立てとその実例が報告され、町家の構造のとらえ方と解析ツールの選択、現行法基準との適合性と安全性への責任の取り方などが話し合われました。その2は「町家の修復再生における職人技術を考える」、辻さんから京都の棟梁塾などの試みが、中島隆弘さんから八女の学習会や焼杉製作などの試み、小学生の体験学習、さらには地元産材を使う町家流通の川上と川下を繋ぐ活動が、橋本さんから市が全面的に支援する金沢職人大学校での本科、修復専攻科各3年の技能習得と改修現場での実地訓練、さらに実際に改修を担える職人を目指す研究会の設置や子供への伝統技術の伝承の現場が紹介され、話し合いでは学ぶ場と生かす場の問題、職人の育成と組織化の困難さ、異種職方同士のコミュニケーションの重要性などが挙がった。その3は「町家、町並みの記録による継承」、南さんから京町家作事組の改修事例のデータ蓄積、改修マニュアルの作成、会報を通した広報と記録が、山田さんから姫路での町家を理解するための調査から始まり、市民や建築家に町家を分かってもらうための調査と冊子作製から町なみ調査へと発展、そのデータが町家改修第1号につながったこと、吉川さんから毎年の奈良町家に特徴的な格子や庭の部分から町なみまで、さらには他地域や海外までの調査をパネル展を通じて公開する活動が紹介され、話し合いでは調査結果を整理保管する大変さ、開示する手立て、記録保持者の把握、情報ネットワークの重要性などが提示されました。いずれも困難な課題ですが、各地の再生事例が増えることで、地域の町家の特徴と地域を貫く共通項が明らかになり、その結果の発信による普及活動で仕事の場が増えることで解決していくだろうと期待します。

4コマ用意された見学会では町家再生活動や観光では訪れることがない、奈良の体験をさせていただき、奈良のまちづくり活動のネットワークの拡がりと、一つや二つどころではない奈良の顔を見ることができました。また私が参加したきたまちと春日大社及び高畑廻りでは、春日大社が氏社として成立する以前の自然信仰、長岡、京都に都が移された平安時代以降の流れ、奈良の視点で描かれ大ヒットした『応仁の乱』の時代、戦国時代の松永氏の多聞城の戦略的重要性から、近代の奈良少年監獄など、まさに歴史の重層、まさしく日本の歴史文化のふるさとを肌で感じることができました。

個人的には10年経ったしぼつぼつ…。という気持ちもあったのですが皆さんの会への期待と熱意に気圧され、作全協創設の趣旨である伝統構法の町家と職方の再生と復権完遂の情熱と責任をたきつけられました。そのための課題のあぶり出しと連携の手立ての提案など、会の活動の歴史を画するであろう10周年の大会になりました。それを実現していただいたなら・町家研究会をはじめとして、奈良まちづくりセンター、〝奈良きたまち〟のまちづくりを考える会、高畑トラスト、春日大社、奈良ホテルの皆さま、本当にありがとうございました。また会員の皆様の協力と会員各位の協力に感謝申し上げますとともに、今後のご支援ご協力をお願いします。

             (梶山秀一郎)

 

 

 

 

  

 

           

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